20~40歳代に多い『椎間板ヘルニア』
椎間板は、椎体同士を接着させ、つなげている軟骨です。同時に、圧力を分散させるクッションの役割を果たす、とても重要な組織です。その構造は中央部がゼラチン状の「髄核 」、周囲はコラーゲン線維かうなる「線維輪」からできています。髄核を「あんこ」、 線維輪を「パン」に見立て、しばしば「あんパン」に例えられます。
ヘルニアは何らかの原因で、あんパンの「あんこ」が飛び出した状態といえます。線維輪に弱い部分があると、そこをめがけて髄核が膨らみ、その部分を押し出すようにヘルニアが発生します。
また、高齢者の病気というより、比較的若い人に起こる病気です。患者さんで多いのは20~40歳代。50歳代後半から、患者さんは減っていきます。
診断と治療について
当院では、視診、問診、運動・感覚・反射などを確認する各種検査・テスト、エックス線検査などをもとに診断を進めます。
診断が確定したら、ますは安静を保ち、薬物療法による保存療法を行います。
薬は、痛みや炎症を抑える非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)や緊張した筋肉をほ ぐして痛みを和らげる筋弛緩薬などを使用します。
十分な効果が得られない場合、オピオイド鎮痛薬、神経性疼痛緩和薬と呼ばれる薬を使うこともあります。
薬物療法で効果が見られない場合や、歩くことができないほど激痛がある時は、「神経ブロック」を行います。局所麻酔薬を神経やその周辺に注射して痛みをブロックする方法で「硬膜外ブロック」と「選択的神経ブロック」があります。2週間ごとに受診し症状が楽になっていれば、薬の量や内容を見直しながら保存療法を継続します。
痛みが落ち着いてきたら適切なストレッチや股関節周辺の筋肉をほぐすことなどのが症状療法を行い、腰の改善につながります。
お尻から太ももの後ろにある「腎筋」や「八ムストリングス」太もも内側の「内転筋」体幹を支える「背筋」のストレッチなどが有効で、十分に伸ばして動きをよくすることで、腰への負担が軽減されます。
炎症が鎮まると、ヘルニアを除去しなくても、8~9割の患者さんは症状が治まり、大きな支障なく日常生活を送れるようになります。
ストレッチの例
気をつけるべきケース
ただし、膀胱直腸障害(排尿や排便のコントロールができない)や、肛門・会陰部(肛門と外陰部の間)のしびれ・灼熱感がある、脚や足首に力が入らない場合などは、放置すると神経の損傷が元に戻らなくなる危険があり、緊急手術の必要があります。
次のことが当てはまる時にはできるだけ早く専門医への受診が必要になります。
1)どのような姿勢をとっても、痛みがとれない。
2)腰から脚にかけてしびれがある。
3)痛みやしびれが だんだん強くなってきた。
4)症状が出てから数日たっても、激しい痛みが取れない。
5)脚が動かせない。
6)脚や足首に力が入らない。
7)尿が出にくい、あるいは漏れる。
8)頻繁に便意を催す。
特に5~8は1つでも当てはまったら、緊急手術が必要となる可能性があります。
手術法には、「ラブ法」「顕微鏡下椎間板切除術」な どいくつかありますが、患者さんの状態によって、どの方法がよいかを検討します。
詳しくは当院にお尋ねください。