労災保険・交通事故治療費について

災害補償の基本的な性格

  1. 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。(労働基準法75条)
  2. 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。(労働基準法第19条)
  3. 労働基準法第19条、第75条に違反した場合は、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金が課せられる。(労働基準法第119条)
  4. 労災保険制度は、この事業主の災害補償責任(無過失責任)を担保するものであり、労災保険給付等により災害補償給付が行われた場合は、使用者は、補償の責を免れる。(労働基準法第84条)

労災保険給付の種類

  1. 療養補償給付、休業補償給付、二次健康診断等給付、その他年金及び一時金等の給付
  2. 業務災害以外に通勤災害も保険給付の対象
  3. 保険給付とは別に、社会復帰促進等事業として当該労働者の労働能力を維持し、円滑な社会生活を営むことができるよう、せき髄損傷等の傷病治ゆ者に対するアフターケア(後遺障害に付随する疾病の予防その他の保健上の措置)等の措置を講じている。

費用の負担

労災保険給付等に要する費用は、全額事業主の負担によりまかなわれ、保険料率は事業の種類ごとに災害率等に応じて定められている。なお、事業主の災害防止努力を促進し、かつ、保険料負担の具体的公平を図るために、個々の事業主ごとに収支率(保険料額に対する保険給付額等の割合)に応じて、40%の範囲内で保険料率が増減される(メリット制)

労災診療費算定基準について

診療単価 課税医療機関 12円
非課税医療機関 11円50銭
療養の給付請求書取扱料 2,000円
労災保険指定医療機関等において、「療養(補償)等給付たる療養の給付請求書(告示様式第5号又は第16号の3)」を取り扱った場合( 再発を除く。)に算定できる。
初診料 3,850円(医科・歯科とも)
ア 労災保険の初診料は、支給事由となる災害の発生につき算定できる。したがって、既に傷病の診療を継続(当日を含む。以下同じ。)している期間中に、当該診療を継続している医療機関において、当該診療に係る事由以外の業務上の事由又は通勤による負傷又は疾病により、初診を行った場合は、初診料を算定できる。
イ 健保点数表(医科に限る。)の初診料の注5のただし書に該当する場合は、1,930 円を算定できる。
ウ 紹介状なしで受診した場合の定額負担料(健康保険における選定療養費)を傷病労働者から徴収した場合は、 1,850 円を算定する。

救急医療管理加算

入院6,900円(1日につき)
入院外1,250円
初診の傷病労働者について救急医療を行った場合に、上の金額を算定できる。
ただし、この算定は同一傷病につき1回限り(初診時)とする。なお、入院については初診に引き続き入院している場合は7日間を限度に算定できる。また、健保点数表における「救急医療管理加算」と重複算定することはできない。
再診料 1,420円
ア 一般病床の病床数 200 床未満の医療機関及び一般病床の病床数 200 床以上の医療機関の歯科、歯科口腔外科において再診を行った場合に算定できる。
イ 健保点数表( 医科に限る。) の再診料の 注3 に該当する場合については、710 円を算定できる。
ウ 歯科、歯科口腔外科の再診について、他の病院(病床数 200 床未満に限る。)又は診療所に対して、文書による紹介を行う旨の申出を行ったにもかかわらず、当該医療機関を受診した場合の定額負担料(健康保険における選定療養費)を傷病労働者から徴取した場合は、 1,020 円を算定する。
再診時療養指導管理料 920円
外来患者に対する再診の際に、療養上の食事、日常生活動作、機能回復訓練及びメンタルヘルスに関する指導を行った場合にその都度算定できる。
四肢(鎖骨、肩甲骨及び股関節を含む。)の傷病に係る処置等の加算
四肢(鎖骨、肩甲骨及び股関節を含む。)の傷病に係る次の処置等の点数は、健保点数の1.5倍として算定できる(1点未満の端数は1点に切り上げる。)。
なお、手(手関節以下)、手の指に係る次のア、イの処置及びエの手術については、健保点数の2倍として算定できる。
また、次のエの手の指に係る創傷処理(筋肉に達しないもの。)については、指1本の場合は健保点数表における創傷処理の筋肉、臓器に達しないもの(長径5センチメートル未満)の点数(以下この項において「基本点数」という。)の2倍とし、指2本の場合は指1本の場合の点数に基本点数を加算した点数、指3本の場合は指2本の場合の点数に基本点数を加算した点数、指4本の場合は指3本の場合の点数に基本点数を加算した点数、指5本の場合は基本点数を5倍した点数とする。
ア 創傷処置、下肢創傷処置、爪甲除去(麻酔を要しないもの)、穿刺排膿後薬液注入、熱傷処置、重度褥瘡処置、ドレーン法及び皮膚科軟膏処置
イ 関節穿刺、粘(滑)液囊穿刺注入、ガングリオン穿刺術、ガングリオン圧砕法及び消炎鎮痛等処置のうち「湿布処置」
ウ 絆創膏固定術、鎖骨又は肋骨骨折固定術、皮膚科光線療法、鋼線等による直達牽引(2日目以降)、介達牽引、矯正固定、変形機械矯正術、消炎鎮痛等処置のうち「マッサージ等の手技による療法」及び「器具等による療法」、低出力レーザー照射
エ 皮膚切開術、創傷処理、デブリードマン、筋骨格系・四肢・体幹手術及び神経・血管の手術
オ リハビリテーション
手指の創傷に係る機能回復指導加算 190点
手(手関節以下)及び手の指の初期治療における機能回復指導加算として、当該部位について、健保点数表における「皮膚切開術」、「創傷処理」、「デブリードマン」及び「筋骨格系・四肢・体幹」の手術を行った場合に1回に限り所定点数にさらに190点を加算できる。

処置等の特例

消炎鎮痛等処置(「湿布処置」を除く。)、腰部又は胸部固定帯固定、低出力レーザー照射、介達牽引、矯正固定及び変形機械矯正術(以下「消炎鎮痛等処置等」という。)に係る点数は、負傷にあっては受傷部位ごとに、疾病にあっては1局所(上肢の左右、下肢の左右及び頭より尾頭までの躯幹をそれぞれ1局所とする。)ごとに、1日につきそれぞれ算定できる。
ただし、3部位以上又は3局所以上にわたり当該処置を施した場合は、1日につき3部位又は3局所を限度とする。
なお、消炎鎮痛等処置等と疾患別リハビリテーションを同時に行った場合は、疾患別リハビリテーションの点数と、消炎鎮痛等処置等の1部位(局所)に係る点数をそれぞれ算定できる。
固定用伸縮性包帯
算定額は、実際に医療機関が購入した価格を10円で除し、労災診療単価を乗じた額とする。
コンピューター断層撮影料
コンピューター断層撮影及び磁気共鳴コンピューター断層撮影が同一月に2回以上行われた場合であっても、所定点数を算定できる。
健保点数表の同一月の2回目以降の断層撮影の費用についての逓減制については、適用しない。
コンピューター断層診断の特例 225点
他の医療機関でコンピューター断層撮影を実施したフィルムについて診断を行った場合は、初診料を算定した日に限り、「 E203 コンピューター断層診断」を算定できるとされているが、再診時についても、月1回に限り算定できる。

リハビリテーション

疾患別リハビリテーションについては、健保点数表のリハビリテーションの通則1にかかわらず、次の点数で算定することができる。
(ア) 心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅰ) (1単位)
  a  理学療法士による場合              250点
  b  作業療法士による場合              250点
  c  医師による場合                 250点
  d  看護師による場合                250点
  e  集団療法による場合               250点
(イ) 心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅱ) (1単位)
  a  理学療法士による場合              125点
  b  作業療法士による場合              125点
  c  医師による場合                 125点
  d  看護師による場合                125点
  e  集団療法による場合               125点
(ウ) 脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅰ) (1単位)
  a  理学療法士による場合              250点
  b  作業療法士による場合              250点
  c  言語聴覚士による場合              250点
  d  医師による場合                 250点
(エ) 脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅱ) (1単位)
  a  理学療法士による場合              200点
  b  作業療法士による場合              200点
  c  言語聴覚士による場合              200点
  d  医師による場合                 200点
(オ) 脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅲ) (1単位)
  a  理学療法士による場合              100点
  b  作業療法士による場合              100点
  c  言語聴覚士による場合              100点
  d  医師による場合                 100点
  e  a からd まで以外の場合             100点
(カ) 廃用症候群リハビリテーション料(Ⅰ) (1単位)
  a  理学療法士による場合              250点
  b  作業療法士による場合              250点
  c  言語聴覚士による場合              250点
  d  医師による場合                 250点
(キ) 廃用症候群リハビリテーション料(Ⅱ) (1単位)
  a  理学療法士による場合              200点
  b  作業療法士による場合              200点
  c  言語聴覚士による場合              200点
  d  医師による場合                 200点
(ク) 廃用症候群リハビリテーション料(Ⅲ) (1単位)
  a  理学療法士による場合              100点
  b  作業療法士による場合              100点
  c  言語聴覚士による場合              100点
  d  医師による場合                 100点
  e  a からd まで以外の場合             100点
(ケ) 運動器リハビリテーション料(Ⅰ) (1単位)
  a  理学療法士による場合              190点
  b  作業療法士による場合              190点
  c  医師による場合                 190点
(コ) 運動器リハビリテーション料(Ⅱ) (1単位)
  a  理学療法士による場合              180点
  b  作業療法士による場合              180点
  c  医師による場合                 180点
(サ) 運動器リハビリテーション料(Ⅲ) (1単位)
  a  理学療法士による場合               85点
  b  作業療法士による場合                85点
  c  医師による場合                   85点  
  d  a からc まで以外の場合              85点
(シ) 呼吸器リハビリテーション料(Ⅰ) (1単位)
  a  理学療法士による場合              180点
  b  作業療法士による場合              180点
  c  言語聴覚士による場合              180点
  d  医師による場合                 180点
(ス) 呼吸器リハビリテーション料(Ⅱ) (1単位)
  a  理学療法士による場合                85点
  b  作業療法士による場合                85点
  c  言語聴覚士による場合                85点
  d  医師による場合                  85点
疾患別リハビリテーションについては、リハビリテーションの必要性及び効果が認められるものについては、疾患別リハビリテーション料の各規定の注1ただし書にかかわらず、健保点数表に定める標準的算定日数を超えて算定できることとし、健保点数表の疾患別リハビリテーション料の各規定の注5、注6及び注7(注6及び注7は脳血管疾患等リハビリテーション料、廃用症候群リハビリテーション料及び運動器リハビリテーション料に限る。)については、適用しない。
入院中の傷病労働者に対し、訓練室以外の病棟等において早期歩行、ADLの自立等を目的とした疾患別リハビリテーション料(Ⅰ)(運動器リハビリテーション料(Ⅱ)を含む。)を算定すべきリハビリテーションを行った場合又は医療機関外において、疾患別リハビリテーション料(Ⅰ)(運動器リハビリテーション(Ⅱ)を含まない。)を算定すべき訓練に関するリハビリテーションを行った場合は、ADL加算として1単位につき30点を所定点数に加算して算定できる。
健保点数表の疾患別リハビリテーション料の各規定における早期リハビリテーション加算、初期加算及び急性期リハビリテーション加算については、健保点数表に準じる。
指導・その他
職業復帰訪問指導料 精神疾患を主たる傷病とする場合 1日につき770点
その他の疾患の場合 1日につき580点
傷病労働者(入院期間が1月を超えると見込まれる者又は入院治療を伴わず通院療養を2か月以上継続している者であって、就労が可能と医師が認める者。)が職業復帰を予定している事業場に対し、医師等(医師又は医師の指示を受けた看護職員(看護師及び准看護師。以下同じ。)、理学療法士、作業療法士及び公認心理師をいう。以下同じ。)又は医師の指示を受けたソーシャルワーカー(社会福祉士及び精神保健福祉士をいう。 以下 同じ。)が当該傷病労働者の同意を得て職場を訪問し、当該職場の事業主に対して、職業復帰のために必要な指導(以下「訪問指導」という。)を行い、診療録に当該指導内容の要点を記載した場合に、入院中及び通院中に合わせて3回(入院期間が6月を超えると見込まれる傷病労働者にあっては、入院中及び通院中に合わせて6回)に限り算定できる。
医師等のうち異なる職種の者2人以上が共同して又は医師等がソーシャルワーカーと一緒に訪問指導を行った場合は、380点を所定点数に加算して算定できる。
精神疾患を主たる傷病とする場合にあっては、医師等に精神保健福祉士を含む。
訪問指導を実施した日と同一日又は訪問指導を行った後1月以内に、医師又は医師の指示を受けた看護職員、理学療法士若しくは作業療法士が上記アの傷病労働者のうち入院中の者に対し、本人の同意を得て、職業復帰を予定している事業場において特殊な器具、設備を用いた作業を行う職種への復職のための作業訓練又は事業場を目的地とする通勤のための移動手段の獲得訓練を行い、診療録に訪問指導の日、訓練を行った日、訓練実施時間及び訓練内容の要点を記載した場合は、訪問指導1回につき2回を限度に職業復帰訪問訓練加算として1日につき400点を所定点数に加算できる。

職場復帰支援・療養指導料

①精神疾患を主たる傷病とする場合
初回900点
2回目 560点
3回目 450点
4回目 330点
②その他の疾患の場合
初回680点
2回目 420点
3回目 330点
4回目 250点
ア 傷病労働者(入院治療後通院療養を継続しながら就労が可能と医師が認める者又は入院治療を伴わず通院療
  養を2か月以上継続している者で就労が可能と医師が認める者。下記イからオについて同じ。)に対し、当
  該労働者の主治医又はその指示を受けた看護職員、理学療法士、作業療法士、公認心理師若しくはソーシャ  
  ルワーカーが、就労に当たっての療養上必要な指導事項及び就労上必要な指導事項を記載した「指導管理
  箋」を当該労働者に交付し、職場復帰のために必要な説明及び指導を行った場合に月1回に限り算定でき
  る。
イ 傷病労働者の主治医が、当該労働者の同意を得て、所属事業場の産業医(主治医が当該労働者の所属事業場
  の産業医を兼ねている場合を除く。)に対して文書をもって情報提供した場合についても算定できる。
ウ 傷病労働者の主治医又はその指示を受けた看護職員、理学療法士、作業療法士、公認心理師若しくはソーシ
  ャルワーカーが、当該労働者の同意を得て、当該医療機関等に赴いた当該労働者の所属事業場の事業主と面
  談の上、職場復帰のために必要な説明及び指導を行い、診療録に当該指導内容の要点を記載した場合につい
  ても算定できる。
エ 上記ア~ウの算定は、同一傷病労働者につき、それぞれ4回を限度(慢性的な疾病を主病とする者で現に就
  労しているものについては、医師が必要と認める期間)とする。
オ 傷病労働者の主治医又はその指示を受けた看護職員、理学療法士、作業療法士若しくはソーシャルワーカー
  が、傷病労働者の勤務する事業場の事業主等又は産業医から、文書又は口頭で、療養と就労の両方を継続す
  るために治療上望ましい配慮等について、助言を得て、医師が治療計画の再評価を実施し、必要に応じ治療
  計画の変更を行うとともに、傷病労働者に対し、治療計画変更の必要性の有無や具体的な変更内容等につい
  て説明を行った場合に、1回につき600点を加算できる。
社会復帰支援指導料 130点
3か月以上の療養を行っている傷病労働者に対して、治ゆが見込まれる時期及び治ゆ後における日常生活(就労を含む。)上の注意事項等について、医師が所定の様式に基づき指導を行い、診療費請求内訳書の摘要欄に、指導年月日及び治ゆが見込まれる時期を記載した場合に、同一傷病労働者につき、1回に限り算定できる。
本指導は、医師が「早期社会復帰のための指導項目」に基づいて行うものであり、算定の際は様式に必要事項を記載し、診療録に添付する必要がある。
精神科職場復帰支援加算 200点
精神科を受診中の者に、精神科ショート・ケア、精神科デイ・ケア、精神科ナイト・ケア、精神科デイ・ナイト・ケア、精神科作業療法、通院集団精神療法を実施した場合であって、当該患者のプログラムに職場復帰支援のプログラムが含まれている場合に、週に1回算定できる。
石綿疾患療養管理料 225点
石綿関連疾患(肺がん、中皮腫、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚に限る。)について、診療計画に基づく受診、検査の指示又は服薬、運動、栄養、疼痛等の療養上の管理を行った場合に月2回に限り算定できる。
石綿疾患労災請求指導料 450点
石綿関連疾患( 肺がん、中皮腫、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚に限る。)の診断を行った上で、傷病労働者に対する石綿ばく露に関する職歴の問診を実施し、業務による石綿ばく露が疑われる場合に労災請求の勧奨を行い、現に療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の給付請求書(告示様式第5号)又は療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の費用請求書(告示様式第7号(1)) が提出された場合に、1回に限り算定できる。
リハビリテーション情報提供加算 200点
健保点数表の診療情報提供料(Ⅰ)が算定される場合であって、医師又は医師の指揮管理のもと理学療法士若しくは作業療法士が作成した職場復帰に向けた労災リハビリテーション実施計画書(転院までの実施結果を付記したもの又は添付したものに限る。)を、傷病労働者の同意を得て添付した場合に算定できる。
初診時ブラッシング料 91点
創面が異物の混入、附着等により汚染している創傷の治療に際し、生理食塩水、蒸留水等を使用して創面のブラッシングを行った場合に算定できる。ただし、この算定は同一傷病につき1回限り(初診時)とする。
術中透視装置使用加算 220点
「大腿骨」、「下腿骨」、「上腕骨」、「前腕骨」、「手根骨」、「中手骨」、「手の種子骨」、「指骨」、「足根骨」、「膝蓋骨」、「足趾骨」、「中足骨」及び「鎖骨」の骨折観血的手術、骨折経皮的鋼線刺入固定術、骨折非観血的整復術、関節脱臼非観血的整復術又は関節内骨折観血的手術において、術中透視装置を使用した場合に算定できる。
「脊椎」の経皮的椎体形成術又は脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術において、術中透視装置を使用した場合にも算定できる。
「骨盤」の骨盤骨折非観血的整復術、腸骨翼骨折観血的手術、寛骨臼骨折観血的手術又は骨盤骨折観血的手術( 腸骨翼骨折観血的手術及び寛骨臼骨折観血的手術を除く。)において、術中透視装置を使用した場合にも算定できる。
労災電子化加算 5点
電子情報処理組織の使用による労災診療費請求又は光ディスク等を用いた労災診療費請求を行った場合、当該診療費請求内訳書1件につき5点を算定できる(令和8年3月診療分まで。)。
頸椎固定用シーネ、鎖骨固定帯及び膝・足関節の創部固定帯
医師の診察に基づき、頸椎固定用シーネ、鎖骨固定帯及び膝・足関節の創部固定帯の使用が必要と認める場合に、実際に医療機関が購入した価格を10円で除し、労災診療単価を乗じた額を算定できる。

当院での自賠取扱い要領

自賠責保険診療費算定基準に関する経緯

この記載は,日本医師会労災・自賠責委員会の平成28年2月付の答申,及び損害保険料率算出機構HPの「自賠責保険 制度の推移」等を参照しています。
1 大正3年3月,東京海上保険株式会社(現在の東京海上日動火災保険株式会社)が自動車保険の販売を開始しました(東京海上日動HPの「旧東京海上の沿革」参照)。
2(1) 自動車の急激な普及に伴う交通事故の増加を受け,交通事故被害者の救済のため,昭和30年7月29日,自動車損害賠償保障法が公布されました。
(2) 昭和30年12月1日,自賠責保険の引受が開始し,昭和31年2月1日,自賠責保険の締結強制が実施されました。
(3) 昭和48年8月1日から強制保険と任意保険を一括し,任意保険会社が医療機関に医療費を支払うという一括払い制度が開始しました。
3(1) 自賠責保険は自由診療でありますところ,損害保険会社に対する診療費請求額が高額となりすぎたため,自賠責保険審議会は,昭和59年12月,自動車保険の収支改善等に関する答申が行われました。その中で一部の医療機関の医療費請求額が過大である事実を指摘され、適正化を求めて日本医師会・自動車保険料率算定会(現:損害保険料率算出機構)・日本損害保険協会の三者協議による、自動車保険診療費算定基準の早期設定の必要性が意見具申されました。
これを受けて昭和60年から自賠責診療費算定基準(新基準)の設定に向けた三者協議会(医療協議会)が開始されることとなりました。
(2) 平成元年6月28日,日本医師会,日本損害保険協会及び自動車保険料率算定会(現在の損害保険料率算出機構)の三者協議の結果,自賠責保険診療費算定基準(いわゆる「新基準」)が制定されました。
また,日本医師会長は,全国都道府県医師会長宛に,同日,「自賠責保険の診療費算定基準の設定について」という通知を出しましたところ,その趣旨は以下のとおりです。
① 自動車保険の診療費については、現行労災保険診療費算定基準に準じ、薬剤など「モノ」についてはその単価を12円とし、その他の技術料については、これに20%を加算した額を上限とする。
② ただし、これは個々の医療機関が現に請求し、支払を受けている診療費の基準を引き上げる趣旨のものではない。
4(1) 平成2年6月1日,栃木県の実施を皮切りに,新基準に賛同する地域から順次実施され,平成8年3月1日には33道府県の地区医師会が実施に至りました(大阪府の場合,平成5年10月1日)ものの,その後実施を予定する地域がなかったため,日本医師会では新基準普及推進の立場からその問題点を探り,解決を図るために,平成8・9年度日本医師会労災・自賠責委員会に対して諮問し,検討の結果、答申されました。
しかし,その効果もなく,平成10年6月,再度,日本医師会長から,新基準策定から10年が経過したことを踏まえ,さらなる新基準の推進のために「自賠責保険診療費算定基準(新基準)の見直し」について諮問があり,新基準の問題点の改善等を含めた見直しと,今後のあり方について鋭意検討を重ね,その結果が平成11年12月に答申されました(北海道医師会HPの「労災・自賠責保険の動き」参照)。
その作業と相まって,平成11年度に4地区(東京都,茨城県,香川県及び三重県)が実施したのを契機に,平成12年度には2地区(千葉県及び静岡県),平成13年度には5地区(愛媛県,神奈川県,群馬県,埼玉県及び沖縄県),平成15年4月1日には1地区(京都府),平成23年10月1日には1地区(岡山県)が実施しました(平成26年1月の「自賠責保険診療報酬基準案について」参照)。
(2)  平成27年11月,自賠責保険診療費算定基準について最後まで合意していなかった山梨県が合意した結果,すべての都道府県において自賠責保険診療費算定基準が実施されるに至りました(金融庁HPの「第135回自動車損害賠償責任保険審議会議事録」(平成28年1月21日開催分)参照)。
5  日本医師会労災・自賠責委員会の平成28年2月付の答申27頁には,「新基準の医療機関単位の採用率については、全国平均で6割を超えているとの報告もあるが、都道府県により大きな差異があるのが現実である。」と書いてあります。
自賠責診療費算定基準(自賠責診療報酬基準)の内容
自賠責診療費算定基準(自賠責診療報酬基準)は、1989年6月、交通事故の診療単価について自動車保険料率算定会(現・損害保険料率算出機構)・日本損害保険協会・日本医師会の3者が合意した診療報酬基準です。
「保険金を支払う保険会社サイド」と「請求する医療機関サイド」との申し合わせで、法的な強制力はありません。
この自賠責保険診療費算定基準を大きく上回る診療基準で算定した治療費を請求すると、高額診療として、損保会社が支払いを拒否する場合があります。
自賠責診療費算定基準(自賠責診療報酬基準)
自賠責診療費算定基準(自賠責診療報酬基準)は、労災保険を参考にして診療費の基準を設定しています。交通事故は「交通災害」であり、災害医療を扱う労災保険の診療報酬基準を参考にするのが適切との判断からです。
自賠責診療費算定基準(自賠責診療報酬基準)は、次の通りです。
“自動車保険の診療費については、現行労災保険診療費算定基準を参考にし、薬剤等「モノ」についてはその単価を12円とし、その他の技術料についてはこれに20%を加算した額を上限とする。
ただし、これは個々の医療機関が現実に請求し、支払いを受けている診療費の水準を引き上げる趣旨のものではない。“
薬剤等「モノ」は、労災保険の診療費算定基準と同じ1点12円です。「モノ」とは、薬剤(内服薬・外用薬・注射薬・試薬)、酸素・窒素、血液、フィルム代、衛生材料、特定保健医療材料です。
「モノ」以外の「その他の技術料」は、労災保険の診療費算定基準に20%を加算した額が上限です。つまり、労災保険の診療費算定基準の20%増しを基準としています。
この基準は上限を定めるもので、ただし書は、この基準より低い基準で診療費を請求していた場合に、この水準まで引き上げるものではないことを明確にしたものです。
そもそも、自賠責保険診療費算定基準の設定は、一部の医療機関等の過大な医療費請求に対し、交通事故診療費の適正化を図ることが主な目的です。
当院での治療費については、原則として診断書・明細書は毎月請求させていただきます。
つきましては、請求後1ヶ月以内に入金処理していただきますようにお願いいたします。なお請求後、一定期間を過ぎても入金の確認が出来ない場合、医師会を通じて自動車事故医療苦情申立を提出し調査の協力をいただいております。
治療費の一部抜粋:初診料3820円、救急医療管理加算1250円、再診料1400円、再診時療養920円、夜間早朝加算50点、外来管理加算52点、明細書発行体制等加算1点、創傷処置52点、熱傷処置(100平方センチメートル未満)135点、絆創膏固定術500点、鎖骨又は肋骨骨折固定術500点、関節穿刺(片側)120点、消炎鎮痛処置(器具等による療法・湿布処置)35点(※処置料のうち四肢(鎖骨、肩甲骨及び股関節を含む。)の傷病に対しは1.5倍の算定を行います。またこのうち創傷処置、熱傷処置、関節穿刺(片側)、湿布処置に対しては2.0倍の算定を行います。)、運動器リハビリテーションⅠ190点(1単位10分)(運動器リハビリテーションⅠのうち四肢(鎖骨、肩甲骨及び股関節を含む。)の傷病に対しは1.5倍の算定を行います。)

実際の交通事故診療単価

自賠責診療費算定基準をベースにすると、1点単価は、外来が20~28円、入院が15円前後となります。
(参考:日本臨床整形外科学会編集『Q&Aハンドブック交通事故診療 全訂新版』創耕舎 66ページ)
裁判では1点単価25円まで認められていますが、最近は1点20円が主流です。
自賠責診療費算定基準にもとづき、損保会社は、医療機関との間で1点15円~20円の範囲で交渉を行うことが多いようです。
自賠責診療費算定基準(自賠責診療報酬基準)の策定経緯
交通事故診療費の適正化問題の議論は、およそ半世紀前まで遡ります。
交通事故診療にかかる医療費の請求額が過大であることが問題となっていて、1969年10月に自賠責審議会が、「国民の納得する公正な診療基準と適正な支払方法の確立を図るべき」とし、自賠責保険独自の診療報酬基準を策定する必要があると答申しました。
これを契機に交通事故診療費の基準策定に向けた議論が行われましたが、このときには基準策定に至りませんでした。
その後、交通事故の激増によって自賠責保険の財政が赤字となり、自賠責保険料の値上げが検討された1984年の自賠責審議会で、再度、自賠責保険の診療報酬基準を策定すべきとする答申が出されました。
この答申には、自動車保険料率算定会(現・損害保険料率算出機構)と日本損害保険協会が、日本医師会の協力を得て、三者協議による自動車保険診療報酬基準を作成し、全国的に浸透・普及した段階でその制度化を図るという内容が盛り込まれました。
この答申を受け、自動車保険料率算定会(現・損害保険料率算出機構)・日本損害保険協会・日本医師会の3者が協議を重ね、1989年6月に合意が成立しました。
こうして策定されたのが、自賠責診療費算定基準(自賠責診療報酬基準)です。
自賠責診療費算定基準(自賠責診療報酬基準)に強制力はない
自賠責診療費算定基準は、あくまでも損害保険料率算出機構・日本損害保険協会・日本医師会の3者の申し合わせ(合意)にすぎず、法的な強制力はありません。
そのため、各都道府県単位で、3者が協議し合意を得て進めていく方式が採られました。また、都道府県単位で3者が合意に至った場合も、都道府県内の医療機関で一斉に採用する方式でなく、各医療機関が個々に採用を判断する「手あげ方式」としています。
2015年11月に、最後に残っていた山梨県が合意し(2016年1月21日自賠責審議会議事録)、現在は、全ての都道府県で合意に至っています。
ただし、医療機関の数では、自賠責診療報酬基準を採用している医療機関は6割にとどまっています(2011年1月14日自賠責審議会議事録)。
日本医師会の労災・自賠責委員会答申(2016年2月)でも、「新基準の医療機関単位の採用率については、全国平均で6割を超えているとの報告もあるが、都道府県により大きな差異があるのが現実である」と指摘しています。
まだまだ自賠責診療費算定基準の採用比率は高いとはいえず、しかも、地域によってアンバランスがあるのが実情です。
1984年の自賠責審議会答申で、自賠責診療費算定基準が「全国に浸透・普及した段階で制度化を図る」とされていました。全国すべての都道府県で基準採用の合意がなされたのですから、今後、法制化の動きが出てくることが期待されます。