腱板損傷の診断と治療について

肩の痛みが治らずにお困りですか?

  • 交通事故で肩を痛めたがいっこうに良くならない。
  • 「打撲」と診断されたけど、上の物を取るのもつらい。
  • そんなに大きな怪我じゃないのにすごく痛むのですが?

肩の腱板損傷は要注意です。

交通事故での肩の打撲は、レントゲンを撮って、骨折が無ければそれで終了となるケースが多くあります。
しかし、打撲後に痛みが改善せず、就寝後も肩の痛みが強くなる患者さんの中に、MRIを撮影してみると、腱板損傷を呈している症例が多々あります。
当院では骨折が確認できなくとも安易に「打撲」とすることなく、注意深く経過を観察し、必要に応じMRIで損傷部位をより詳細に診察しています。

そもそも腱板損傷とは?

腱板損傷は上肢を挙上した時、手を遠くへ伸ばした時、後ろのものを取ろうととした時に瞬間的に痛みが強くなる特徴があります。
腱板損傷とは腕を上に上げるのに使われる腱の4本のうち、そのどれかが損傷をした状態です。そのうちの一つの棘上筋腱が完全断裂や大きく部分断裂した場合は、腕が上がらないので手術する事になります。
そこまでの損傷では無い時、MRI画像をみても断裂しているかわからない、もしくは断裂が無い状態で、かつ、肩が痛い、腕が上がらない無い場合は、治療は手術以外の手段を取る事になります。

この程度であると、医療機関によっては「腱板損傷」という病名をつけてもらえず、打撲による肩の痛みが長引いている、すなわち軽症であるのですぐに治療終了、もしくは保険会社から治療打ち切りとなってしまう事が多いのが実情です。
ですので、腱板損傷が疑われるような痛みや症状があれば、画像検査だけではなく、徒手検査(医師が直接、患者さんを診察し、医師の手や経験を使って診断する検査法)も行い、それで異常が認められるようであれば、「腱板損傷」という病名をつけてもらう事が大切になってきます。

しかしながら、受傷機転(事故の状態)に特に腱板損傷を来すような状態が無い場合、保険の実務で考えると腱板損傷が否定されてしまう可能性があります。
つまり、主治医が腱板損傷と診断しても自賠責では認められないことも考えられます。

一般的に受傷機転としては、肩を直接打撲した時、肩、腕が捻れた時、腕が真っ直ぐな状態で手をついた時、自転車運転中に急ブレーキをかけて止まった時に肩に負荷がかかった時など、腱板を損傷しやすくなります。バイク事故で肩を強打するケースが多いと言えるでしょう。

腱板損傷のメカニズム

腱板損傷が軽度でも、腱の損傷で排出された腱の切れカスであるゴミは、体にとって異物なので免疫反応により、掃除をして除去される事になります。
ゴミを食べる免疫細胞はゴミを溶かすためにタンパク分解酵素を使います。この時、ゴミも溶けますが、体の組織もタンパクからできているので、一部一緒に溶けてしまい脆弱になり事があります。
この時の腱組織は肉眼的にみると、赤く腫れていると思われます。この状態を炎症が起きている、と言います。
さらに詳しくみると毛細血管が拡張し血管の隙間から水分が漏出し、キニン、ブラジキニンなどの発痛物質も出現して痛みの神経を刺激しています。

人によって上記のような免疫反応による炎症の強弱は様々で、同じ程度の損傷でも痛みや腕の上がりずらさは様々です。例えば、花粉症は一種の免疫反応ですが、人によっては全く症状が発生しない人もいれば、息苦しい程、強い症状が出る人もいます。
肩の炎症反応も同じくらいの損傷程度でも症状が強くなり、日常生活に支障をきたす人もいるという事です。患者さんからすれば、治療して頂いている医師には、上記を踏まえ自分の辛さを理解してもらいたいものですし、当院では「日にち薬」で終わらせず、できるだけ正確に身体の状態をお伝えすることができるよう、診察と検査を行っています。

炎症反応が継続した後、組織は傷ついた部分を線維芽細胞という細胞が出現して、損傷部を線維組織で穴埋めしていきます。そして肩関節の腱や脂肪、筋肉、関節包などは互いに線維によって癒着して、動かし難い状態となります。これを関節の拘縮といいます。

こうなってしまうと、6ヶ月かそこらで癒着が治らない場合が多いので、一旦症状固定として後遺障害診断を行います。

治療は基本的にリハビリテーションが大事で、癒着を改善していく事になります。
また、肩関節周囲、もしくは肩関節内にヒアルロン酸注射を行い、積極的に炎症を改善させ痛みを緩和し、リハビリテーションがやり易いようにしていく方法もあります。

最悪、癒着が残り何をしても改善が認めら無い場合は、全身麻酔を行い、手術的に癒着している部位をメスにて切り離していくと、さすがに癒着は改善します。

このような癒着は肩の腱損傷だけではなく、鎖骨骨折や肩鎖関節の脱臼・骨折などでも呈する事がありますので、真面目にリハビリテーションを行うことが大切です。

しつこい肩の痛みでも諦めないで

患者様にとって、身体の中で起こっていると予想されることを説明してもらえるかどうかはとても大切なことであると当院では考えています。骨折でない場合でも、単純に「打撲ですね」で片付けるのではなく、腱板に損傷がある可能性も考えながら経過を観察していくことが重要です。バイク事故などで肩をお怪我なされ、しつこい痛みに悩んでいらっしゃるようであれば、お気軽にご相談ください。